2020年3月11日水曜日

『へレディタリー/継承』した後にどう生きるか?

最寄りの映画館でアリ・アスター監督の『ミッドサマー』の上映が始まった。かと思ったら、どうやらすぐに上映終了してしまうようだ。前作『へレディタリー/継承』の評判も良いし観に行きたいが、前作もまだ観ていない。前作を観て準備万端で挑もうと映画を観る隙を伺うも、うちでホラー映画に興味があるのは私一人なのでなかなか機会が巡ってこなかった。先日ようやく観ることが出来た。

ヘレディタリー 継承(字幕版)
(2019-03-27)
売り上げランキング: 59

妻が寝たあとで、灯りを消した部屋でヘッドホンをつけ、一度も映画を中断することなく観れたのは、自宅でホラーを観る環境としてはこれ以上ない条件だと思う。

怪現象の原因はなんなんだ?

ホラー映画では、必ず怖いことが起こる。では、怖いことは何故起きるのか。 その理由はそれぞれの映画によってさまざまであって良いのだと思うのだけど、この映画の特徴の一つは、怖いことが起こる理由が最後に明かされることだろう。 例えば、狂った一家に出会ったことがきっかけで恐ろしい目に遭うこともあれば、悪霊を復活させてしまうことで惨事に巻き込まれることもある。他にもこのように禁忌に触れることによって引き起こされる恐怖を描いた映画は多いが、いずれも禁忌を破った時点で怖さの原因が判明する。

最後に種明かしをする映画がないかといえばそうでもない。『シックス・センス』では最後の最後で主人公が恐ろしい目に会ってきた理由が明かされている。

原因が継承されている?

タイトルにもなっているように、もう一点の特徴は怖いことが起こる原因の継承の仕方だろう。

観る前には継承というタイトルから、祖母に取り憑いていた悪霊が家族の誰かに取り憑くものかと想像していた。想像していた内容と映画の内容とで、それほど相違はないように思えるが大きく違うのは、原因に捉えられたときに死ぬか否かの違いだ。殺人鬼であれ、悪霊であれ、狙われた人物は捉えられたときに殺される。そして殺人鬼の対象は次へと移る。しかしながら、この映画では捉えられたときに死ぬことが出来ない。

映画内では描かれていないが、捉えられた後に今までとまったく違う生き方を肯定的に捉えられなければ死ぬまで辛い時間を過ごすことになる。死が救いとならないのだ。

恐ろしいことが起こったその後

恐ろしいことが起きた。 今までと違った価値観を生きることになった。今までとは違うが、まわりには祖母と母もいる。そのような今まで想像もしなかった環境に置かれたとき、どのように生きていくか、そう問いかけるような映画ではないだろうか。