どこで「理解」のことを知ったのか覚えていないのだけど、この短編集を手にした時に、表題作の「あなたの人生の物語」よりもまっさきに読むべき短編だと思ったのはよく覚えている。 思い出せたらすっきりするんだけど、ずっと積読状態で長いこと経ってしまったから難しいかもしれない。
あなたの人生の物語 /早川書房/テッド・チャン
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読みたいと思ったきっかけ
どうして読みたいと思ったのか忘れてしまったけど、
最近、「何かを理解する」という仕組みのことを考えていて、答えはないんだろうけど、そのヒントにならないかなと思ったのがきっかけじゃなかったかな。
私の知りたい「仕組み」は、理解の最小単位はどうなってるんだろう、ということだったんだけれど、
「理解」で描かれる「仕組み」は、統一的全体像を理解するというものだった。
数学でも科学でも、美術でも音楽でも、心理学でも社会学でも、あらゆるもののなかに、その統一的全体像が、音符の織りなすメロディが見えるのだ。
「理解」テッド・チャン『あなたの人生の物語』ハヤカワ文庫SF、2003、79頁
何かを理解するときに、それを他のものと切り離して理解することは出来ない。 どこまで切り離していってもなんらかのつながりが残ってしまうだろうから。 だから最小単位を探すのはたぶん徒労に終わってしまうので、統一的全体像を理解するというのは正しい。
回答は臨界量取得後に描かれ、さらに深くまで考えられている
私の理解の「仕組み」を知りたいという疑問への回答は、「臨界量」を越えた直後に描かれている。 自分の思考を記述する言語を見出し、そしてその言語は書き換え可能である。
思考を記述できるのみならず、それ自体のすべてのレベルにおける働きを記述し、変更することもできる。
「理解」テッド・チャン『あなたの人生の物語』ハヤカワ文庫SF、2003、104頁
人が成長するという概念に納得できないでいたが、その原因がわかった気がする。
何かで失敗してもすぐには自分自身を書き換えられないのは当たり前で、
繰り返し同じ動作を行うことでスポーツが上手くなるように、何度も失敗して身体的に書き換えられるのを待つしかない。
書き換え可能な思考を提示されたことで、書き換えられない思考に気付かされた。