ブータンの卵酒の話を読んで、行ってもいない『未来国家ブータン』の旅を懐かしく思い出した。コンゴでゴリラを食べた話を読んで、『幻獣ムベンベを追え』を読んでみようかという気になった。
『辺境メシ』を読んだからといって、他の本への興味が湧くことはあっても、他の本がつまらなくなることはなさそうだ。すでに読んだ本の情報を補完してくれるし、まだ読んでいない本には興味をそそらせて、読んでみようかなという気にさせてくれる。だから安心して手にとって良いと思う。
食で文化を知る
食べ物に重点を置いている本を読む傾向がある気がするのは、私の旅行も食べ物に重点を置いているからかもしれない。現地の文化を知るには現地の食べ物を食べないとわからない、という考え方が頭にある。もちろん、他にも現地の文化を知る手段はあると思う。現地のヤバそうなものを食べたからと言って、現地の文化を深く知れるかといえば、その時時に応じて答えは違うのではないかと思う。
文化を知りたいのであれば、この本より先に読むべき本があるはずだ。
食べてみたい料理
20カ国以上のさまざまな食材や料理の記録となっているが、私が一番食べてみたいのは中国南部の広西チワン族自治区に住むトン族の羊の胃液料理、ヤンビーだ。
厨房のポリバケツに入ったそれは、黒っぽい緑色をしていて、本当に草食動物が消化している最中の草という感じ。高野秀行『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』文藝春秋,2018,199頁
ヤンビーはヤギが消化することで調理をしている。この胃液をベースに、草をろ過して具材を入れ調理して完成する。胃液を食べているのか草を食べているのか、消化の状態によって味も変わるだろう。ヤンビーを出す店は市内にいくつもあるあらしい。いろいろな店で食べてみたい。