2020年12月19日土曜日

寒ブリと熟成の関係

氷見に本ズワイガニを食べに行ったのだが、宿に着いてふと確認してみると一週間ほど前に寒ブリ宣言が出ていたことに気づいた。本ズワイカニに気を取られていてすっかり忘れていた。だが、宣言直後でなく、この「一週間ほど過ぎていた」ことで良いことがあった。

本ズワイカニを追加した夕食を頂いて大満足の「和風温泉元湯 叶」さんを後にして、富山の情報誌「Takt」に掲載されていた鮨屋へ昼食に向かった。

ブリの重さと熟成が大切

「今日のは13kg超えになります。」とブリの握りを出しながら氷見活魚鮨よしの大将は教えてくれた。重さだけで見れば14kgを超えたブリが良いとのことだが、型も味に影響するらしい。1kg少なくても太っていれば良いそうだ。「このブリは3日ほど熟成させています。熟成させると身の硬さが弱くなって、酢飯と一緒に口の中でほぐれるようになります。地元の人には硬いブリが好まれるんですが、寿司としては一緒にほぐれたほうが楽しんでいただけると思います。うちでは刺し身で出すなら身の硬い獲れたてのもの、寿司で出すなら熟成させたものと、料理によって使い分けています。」
富山にきていつも感じていた、ブリの身の硬さは新鮮さによるもののようだ。だからといって常に新鮮なものがいいとは限らない。

氷見活魚鮨よしさんのランチ

しらす、アオリイカ、ニシバイガイ、石鯛、ふくらぎ、宗太鰹、紅ズワイガニ、サバ、いくらの9貫に茶碗蒸しがついて2500円。ランチとは言えお得。追加で、クエと上述のブリをいただいた。紅ズワイガニの握りがシャリとカニの身が口の中でほぐれて旨い。

国道160号線から少しだけ入ったところにあるので、気軽に寄れて良いかもしれない。

やはり富山県は魚のレベルが高い。

2020年12月8日火曜日

上高地帝国ホテルに観光に行ってきた。

いつかは行きたいと思っていた上高地の帝国ホテルに宿泊してきた。GoToトラベル事業が良い政策とは考えていないが、利用させていただいた。感染者の少ない近隣県で食事に気をつけていれば感染する/させる確率は低いだろうと考えている。もちろん、それが感染を抑えるられるかはわからない。家にいたほうが間違いない。

宿泊したのは11月8日で紅葉も終わり山が白くなりかけていた頃。初めての上高地行きはさわんどバスターミナルから釜トンネルを抜けて行った。自家用車が入れないというのは環境を守りつつ非日常感を出すよくできた制度だと思う。特別な時間を過ごしているという気持ちが高ぶる。
そして帝国ホテル前のバス停で降りると赤い屋根の山小屋のようなかわいらしいホテルが迎えてくれた。

少し早く2時過ぎに着いたのだが、チェックインの際に5時からマントルピースの点火式が予定されていると伝えられる。河童橋への散歩から時間までに帰ってこれるように気をつけなければならない。
熊鈴を借りて河童橋へと続いている遊歩道を歩く。熊笹の茂る林の中を通れるよう、ボードウォークが整備されている。舗装された道路から少し離れているだけだが、どんよりとした天気も手伝って、動物と遭遇しないか気をつけながら歩く。陽が射していればもう少し自然の中の散歩を楽しめたかもしれない。
河童橋へ着くとそれなりに人手があった。
晴れ間が覗くのを待って、岳沢カールを入れて写真を撮影した。

梓川に沿ってホテルまで戻ると、マントルピースを囲むように多くの人が座って点火式を待っていた。
二人の方の進行で点火式が始まり、照明が落とされ、ふいごで火を起こしていく。ふいごに合わせて手拍子を繰り返し、火が起こったあたりで手拍子の速度は頂点に達した。点火によって、ホテルの夜が始まったという感じで、火を使ったこのようなイベントは満足度が高く、よく考えられたイベントだと感心した。このようなイベントが催されるホテルには泊まったことがない。
夕食までまだ時間があったので、マントルピースの下で燃える火を観ながら妻とビールで乾杯をした。

夕食はダイニングルームでコースをいただいた。こちらも素晴らしかった。
宿泊した客室ツインBはそれほど広くはないが、ソファでゆっくりくつろぐことも出来た。トイレと風呂は一緒だっただが、長いバスタブに横になることが出来リラックスできた。
夜中には星を観ることも出来たし、林の中からは獣の鳴き声が聞こえてきた。

翌日は早起きをして田代池へ向かうことにした。雪がちらついていたが濡れるほどではない。昨日の河童橋とは逆の方向となるが、再び遊歩道に入った。

朝7時過ぎと少し早い時間のためか人がいない。5日前にはこの付近で朝6時に子熊の目撃があったと注意をうながす看板がたっていた。熊鈴をズボンにつけていたが、不安になり手で鳴らしながら歩いた。すれ違った人は1人いたが、20分ほど歩いて田代池にたどり着いた。
大正4年(1915年)に最深で5mあった池は、土砂や草木の堆積物によって湿原になっているという。ただの小さな池なのだが、時間の流れを感じさせる。

ホテルに戻り、昨夜と同じダイニングルームで朝食をいただく。
二日間宿泊者たちを見たが40歳前半の私たち夫婦が最年少のように思える。平日の宿泊だったからかもしれない。
また歳を重ねて数十年後、帝国ホテルに宿泊したら何をするだろうか。きっと今回と同じように、河童橋を見て、点火式を見て、夕食を食べるだろう。それは私だけでなく、誰もがそうなのかもしれない。永遠というわけではないが、まだしばらくは同じような営みが繰り返されていくだろう。
そう思うと、映画『シャイニング』で記念撮影の写真の中に入ってしまった、ジャック・ニコルソン演じるジャックの気持ちがわかるような気がした。