政策への評価基準が知りたい
新型コロナウィルスに対して、現在行われている政府の対応をどう考えたら良いのか。政治の知識がない自分には評価する基準がない。目にする評価のどれかを選び取るのではなく、なんらかの基準が必要だと感じるようになった。以前から気になっていた本書の「はじめに」を読んで、政策を決める理念のようなものがわかるのではないかと手にとった。
キャス・サンスティーンの著作は『選択しないという選択』『スターウォーズによると世界は』を読み始めたことがあるのだけれど読み終えられなかった、という苦手意識がある。今回は無事読み終えることができた。
政策を決めるときに考えること
本書では、政府が行う規制とはどのようなものであるべきか、を中心に話が進んでいく。規制という制限をかける合理的な理由として、費用対効果分析の重要性が説かれるが、たぶんポイントはそこではない。費用対効果を分析した結果として規制を行うのは当然の前提として、人々の行動を変容させる手段としてナッジにこそ重点が置かれているように見える。
ナッジの定義は以下の通り。
選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える『選択アーキテクチャー』のあらゆる要素リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン著、遠藤真美訳『実践 行動経済学 ―健康、富、幸福への聡明な選択』日経BP社
新型コロナ対策として、諸外国のように強制や罰則を与えられない日本では、人々の行動を変容させるために有効な手段であるように受け取れる。
ナッジの例として、ダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』で書かれている、システム1とシステム2が例として挙げられている。システム1は直感的に選び取るもの、システム2は熟慮をして選び取るもの、という分類がおおまかには当てはまるだろう。ナッジはここで熟慮をせずとも正しい選択を促すものとして描かれる。
また、別の例ではアメリカ疾病予防管理センターによるHIV感染者の入国禁止撤廃もナッジとして紹介される。このような動きが、HIV感染者に対する偏見をなくすよう、人々の行動を変えている、ということだろう。
ナッジは政策以外にも見て取れる
引用した定義もそうだが、ナッジは政策だけでなく、その他のものにも敷衍して利用されているのだろう。生活していてナッジに気づくものもあるし、今まで気づかないうちに小突かれていたものもあるのだろう。改めて世界を見直してみてナッジ探しをするのも楽しいのかもしれない。