日韓ワールドカップのグループリーグで絶望するルイス・フィーゴを目にしてすぐ、チャンピオンズリーグを観るためにWOWOWに加入した。もう20年以上前の話だ。 それ以来になるが今シーズンはチャンピオンズリーグをグループリーグから観ている。2022年はワールドカップも開催されていたので、サッカーをよく観た。
サッカーを観ていると、ゴール前を守備陣が固めていて、どうやってもゴールを奪えそうにないなと思えるときがある。もちろん、そのままゴールが生まれず試合が終わるときもあるが、予想に反してゴールを奪えるときもある。 なぜ違う結果になるのか、強いチームと弱いチームとはなんなのか。 絶望する選手や、ゴールのカタルシスを楽しむだけではなく、サッカーの中身を楽しみたくなった。
52の原則に細かく分かれていることで、理解がしやすい
52ある原則のうち、サッカーのピッチ内での戦術は30であり、他の22はピッチ外での原則となっている。しかしながら、ピッチ外での原則もサッカーで勝利するための原則には違いない。原則自体はナーゲルスマンがまとめ上げたわけではなく、著者の木崎伸也さんが取材と分析の結果まとめたもののようだ。このまとめ方がサッカー理論初心者の私にはとてもわかりやすかった。30もの項目に細かくわけてくれていることで、ひとつひとつの原則を適用する場合がよくわかる。
たとえば「原則1:最小限の幅」である。
攻撃中にワイドの選手が中へ移動し、陣形の幅を狭めること。木崎伸也,『ナーゲルスマン流52の原則』,ソル・メディア,2022年,20頁
「原則1」と合わせてしまって良いのではないかと思われる原則に、「原則5:狭いポジショナルプレー」、「原則6:ボックス占拠」がある。これらを別にすることで、複数の原則を組み合わせて展開することが出来、バリエーションを作り出せる。
細かなものでいえば「原則13:6番の場所では横パスしてはいけない」という、パスの仕方の原則まである。6番とはボランチのことだ。6番はスローインもしてはいけない。このように原則を細分化していることで、ひとつひとつの原則がわかりやすくなっている。
サッカーの新たな戦術を探し求めている
サッカーの戦術が、どこまで考えられているものなのか、まずそれを知らなかった。個々の選手の主体性に任せている部分が大きいのだと思っていたので、パスの仕方までチームとして決めているとは思っていなかった。そこまで考えているということを知れたのは大きい。試合の見方も大きく変わるだろう。初めて読んだサッカー戦術本として、どのようなレベルで考えているか基本的なことを知れたのはよかった。
それと同時に、今までのサッカーの戦術を打ち破ろうとしているのが良くわかった。ウィングはピッチの幅全体に広がるのが良いものだと思っていたが、そうでない戦術が「原則1」として定義されている。それが、既存の戦術を尊重した上で組み立てられているというのが良い。
『監督は常にスープの中の髪の毛を探さなければならない』木崎伸也,『ナーゲルスマン流52の原則』,ソル・メディア,2022年,91頁
チャンピオンズリーグラウンド16第2レグのザルツブルグ戦後に語ったというこの言葉が、ナーゲルスマンの考え方を現しているように思える。 戦術を重視しながら、これからのチャンピオンズリーグを観ていこう。