2023年2月13日月曜日

『ナーゲルスマン流52の原則』を読んで、サッカーの見方が変わってしまった。

日韓ワールドカップのグループリーグで絶望するルイス・フィーゴを目にしてすぐ、チャンピオンズリーグを観るためにWOWOWに加入した。もう20年以上前の話だ。 それ以来になるが今シーズンはチャンピオンズリーグをグループリーグから観ている。2022年はワールドカップも開催されていたので、サッカーをよく観た。

サッカーを観ていると、ゴール前を守備陣が固めていて、どうやってもゴールを奪えそうにないなと思えるときがある。もちろん、そのままゴールが生まれず試合が終わるときもあるが、予想に反してゴールを奪えるときもある。 なぜ違う結果になるのか、強いチームと弱いチームとはなんなのか。 絶望する選手や、ゴールのカタルシスを楽しむだけではなく、サッカーの中身を楽しみたくなった。

そんなときに出会ったのが本書『ナーゲルスマン流52の原則』だ。

52の原則に細かく分かれていることで、理解がしやすい

52ある原則のうち、サッカーのピッチ内での戦術は30であり、他の22はピッチ外での原則となっている。しかしながら、ピッチ外での原則もサッカーで勝利するための原則には違いない。原則自体はナーゲルスマンがまとめ上げたわけではなく、著者の木崎伸也さんが取材と分析の結果まとめたもののようだ。このまとめ方がサッカー理論初心者の私にはとてもわかりやすかった。30もの項目に細かくわけてくれていることで、ひとつひとつの原則を適用する場合がよくわかる。

たとえば「原則1:最小限の幅」である。

攻撃中にワイドの選手が中へ移動し、陣形の幅を狭めること。
木崎伸也,『ナーゲルスマン流52の原則』,ソル・メディア,2022年,20頁

「原則1」と合わせてしまって良いのではないかと思われる原則に、「原則5:狭いポジショナルプレー」、「原則6:ボックス占拠」がある。これらを別にすることで、複数の原則を組み合わせて展開することが出来、バリエーションを作り出せる。

細かなものでいえば「原則13:6番の場所では横パスしてはいけない」という、パスの仕方の原則まである。6番とはボランチのことだ。6番はスローインもしてはいけない。このように原則を細分化していることで、ひとつひとつの原則がわかりやすくなっている。

サッカーの新たな戦術を探し求めている

サッカーの戦術が、どこまで考えられているものなのか、まずそれを知らなかった。個々の選手の主体性に任せている部分が大きいのだと思っていたので、パスの仕方までチームとして決めているとは思っていなかった。そこまで考えているということを知れたのは大きい。試合の見方も大きく変わるだろう。初めて読んだサッカー戦術本として、どのようなレベルで考えているか基本的なことを知れたのはよかった。

それと同時に、今までのサッカーの戦術を打ち破ろうとしているのが良くわかった。ウィングはピッチの幅全体に広がるのが良いものだと思っていたが、そうでない戦術が「原則1」として定義されている。それが、既存の戦術を尊重した上で組み立てられているというのが良い。

『監督は常にスープの中の髪の毛を探さなければならない』
木崎伸也,『ナーゲルスマン流52の原則』,ソル・メディア,2022年,91頁

チャンピオンズリーグラウンド16第2レグのザルツブルグ戦後に語ったというこの言葉が、ナーゲルスマンの考え方を現しているように思える。 戦術を重視しながら、これからのチャンピオンズリーグを観ていこう。

2023年2月5日日曜日

『物語フランス革命 バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで 』を読んで

フランス革命のことを知りたくなったのは、自由と平等の成り立ちと、封建主義から国民主権への移り変わりがどのように行われたか知りたかったからというのが一点、もう一点は、自由と平等を獲得したフランスと植民地との関係を知りたかったからだ。

フランス革命の影響

自由と平等の成り立ち、封建主義から国民主権への移り変わりが本書で取り上げられている中心と言えるだろう。 フランス革命と植民地との関係への言及はない。フランスと他国との関係でいえば、フランス以外のヨーロッパのでは王国が成立していて、その中で国民主権を目指すフランス革命が起こったとなれば、他国が自国への影響を恐れるのは当然であり、またフランスが獲得した自由と平等を他国へ広めていこうというのも当然である。戴冠したナポレオンがどのような行動をしいていくのか気になるところではあるが、それは本書では描かれていない。

フランス革命を成し遂げた場合、他国にとって封建制度を土台から揺るがす脅威となり戦争の種となる。フランス革命を成し遂げたいフランス内部の目線でしか考えていなかったが、他国から見れば煩わしい問題が起きていて火の粉が降り掛かってくると見える。この観点からは考えたこともなかった。

フランス革命の成り立ちへの違和感

国王ルイ十六世は、改革派で国民のためを思って革命を許容しているように思える。ヴァレンヌ逃亡事件など、革命の妨げとなる行動もしているが、現代の人間と地続きの感性を持っているように思われ、処刑は象徴的な意味合いが大きいように思える。王妃マリーアン トワネットの処刑に関しても、革命政府による革命裁判で処刑された人々に、今まで革命を戦ってきた同士も含まれてくるのをみると、処刑の意義は見いだせない。

ロベスピエール率いる革命政府による恐怖政治は、国王が主権を持つ絶対王政から国民主権への移行の失敗と捉えることも出来る。国民主権を実現するに際して、ナポレオンを皇帝に擁立するという方法以外で、実現することは難しかったのか、よく考えてみたい。

フランス革命の結果

本書のタイトルが『物語フランス革命』であることを考えると、処刑されて空白となったルイ十六世の替わりに、生まれを問わない新たな王として皇帝ナポレオンが戴冠をしたという結末は納得のいくものである。しかしながら、自由と平等、国民主権という観点ではこの結末で良かったのだろうか、という疑問は残る。

王政が倒れたあとの革命政府による恐怖政治の様子をみると、新たな王を擁立しなければ安定した政治を築けなかったのかと思わされる。国民主権という観点から考えれば、一度実現した男性普通選挙も、財産による参政権の制限が復活していることからも、フランス革命で国民主権を勝ち取ったとは言い難いのかもしれない。

すべてが願い通りになったとはいえないかもしれないが、それでも封建主義からの抜け出す大きな一歩だったのだろうことは本書から理解は出来た。