2020年1月30日木曜日

寒ブリと回遊について

寿司屋でおまかせ握りを頼んだ際に「味比べをしてください」とブリとマグロの二貫を同時に出していただいたことがあった。そのブリには大トロのまぐろに負けないほど脂がのっていて、色も白く今まで食べていたブリとは全く違った。ブリは今北海道にいて、これから日本海を南下するための栄養を蓄えているから脂がのっているんです、と教えていただいた。10kg超えですよ、と。11月頭のことだ。これから佐渡の寒ブリも美味しくなるから時期になったらまた来てくださいと寿し鉄の大将は笑っていた。

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回遊について

しばらくその会話のことは忘れていたのだが、ニュースでひみ寒ブリ宣言が出たことを聞いて、その時のことを思い出した。ここ数年、冬には富山へブリを食べに行くほどこだわりがあるのに、ブリの知識がないのはもったいない。ぶりのことをよく知ってから味わえばより深く味わえるはずである。
検索してみると、福井県水産試験場の資料がすぐに見つかった。そこには、平成13年から富山・石川・福井の北陸三県が合同で平成13年から4年間に渡りブリの回遊調査を行った結果がまとめられていた。*1
3歳を超えたブリは、3月から5月の間、九州付近で産卵を行い、5月くらいから日本海を北上し、夏と秋の間を北海道付近で過ごす。11月に入り水温が下がると再び九州へと南下する。北海道で太ったブリを南下する途中で捕えたものが寒ブリとなるようである。

味について

ブリの回遊についてはわかった。では、寒ブリが重宝される根拠はあるのかというのが気になってくる。いくつか資料を見ていると、独立行政法人水産総合研究センターの資料が目に止まった。*2

ブリは刺身素材としても脂の多い魚として評判が高く、大きくなるほど、さらに冬場になると一般に脂質含量が高く、いわゆる脂がのった状態となります。加えて、回遊するパターンによっても脂ののりが異なるとされ、寒ブリ シーズンの12月に佐渡で漁獲したブリ(北方まで大きく 回遊して栄養豊富な寒流の混ざる海域で育ったブリ)と、同じ時期に対馬で漁獲したブリ(南方海域に定着して育ったブリ)を比較すると、佐渡で漁獲されたブリは対馬で漁獲されたブリよりも脂質含量が高い傾向があります。日本海中部で漁獲される寒ブリが珍重される理由は明らかです。
飯田貴次、出世魚ブリの魅力 -大衆のための高級魚-

これを信じるならば、回遊によって味にも違いが出るようだ。
長い距離を泳いでいるから、寒ブリは身が締まった感じがするのだろうか。そこへ言及している資料はまだ見つかっていないが、また気になったときに探してみよう。

*1 日本海における大型ブリの動き
*2 出世魚ブリの魅力 -大衆のための高級魚-

2020年1月13日月曜日

『ムーンライト』を観て感じた生きづらさ

いつからかLGBTという言葉を耳にするようになり、LGBTをテーマにしたコンテンツを目にする機会も増えた。昨年、2019年には『きのう何食べた?』や『おっさんずラブ』など、LGBTを主人公にしたドラマが放送されて好評を博していた。異なる価値観に寛容な社会が求められるようになっていると、テレビやラジオに触れていても肌で感じる。

映画のあらすじ

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『ムーンライト』は、2016年の映画。アメリカに住む黒人の少年が主人公だ。麻薬中毒の母親を持ち、学校でオカマと罵られて仲間にも馴染めていない少年が、成長していく様子を3つの時代に分けて描いている。

幼少期、家庭に居場所のない主人公シャロンに、麻薬の売人フアンが救いの手を伸ばす。いじめにあって逃げていたシャロンにご飯を食べさせ、家に帰りたくないならと恋人と住む家に一晩泊める。その後も、シャロンはフアンの家を訪れるようになり、泳ぎを教えてもらうなど信頼関係を築けているように見える。だが、シャロンの母親はフアンから薬を買っていて、うまく関係を築けない。

学校に馴染めない少年期、シャロンの友人と呼べるのはケヴィンくらい。まわりからはオカマと罵られている。ケヴィンは、シャロンの悩みの相談に乗ることもなく、悩みにも気づかないタイプで、シャロンと深い信頼関係を築いているわけではない。ある晩、シャロンとケヴィンは大麻を吸った勢いで砂浜で性的な関係を持ってしまう。しばらくたった後、学校で周囲に強制されて、ケヴィンはシャロンを殴り、関係は壊されてしまう。

青年期、突然ケヴィンから電話があり、ケヴィンの勤めるレストランで久しぶりに再会することになる。ケヴィンは女性と結婚し子供をもうけたことを告げ、いつも持ち歩いている子供の写真を見せる。(ケヴィンは昔と変わらず相手の気持ちを読まない。)シャロンは自分がフアンと同じ麻薬の売人になったこと、性的な関係を持ったのはケヴィンただひとりだということを告げる。

たぶん映画の伝えたいこと

シャロンは2つの公に出来ない事柄を抱えている。麻薬の売人であることと、ゲイであるということだ。シャロンにとって、自分の本心を表に出さないことは、当たり前のことなのかもしれない。タイトルが示すように、本心を出せるのは月夜の下だけなのだろう。
誰にも本心を相談出来ないことで、シャロンは狭い世界を生きて来たように見える。ケヴィンにそれらを話して相談に乗ってもらうことでシャロンには自由に生きて欲しい。

2020年1月11日土曜日

年末の締めに『鮨 希味』に入ってみた。

年末に一日だけ忘年会の予定のない日が出来た。ここ数年、亀のお世話をする替わりに年末に帰省する友人宅へ宿泊させてもらっている。そのときはいつも都内に来たのだから友人と食事をしようという流れになっていた。いずれの友人とも予定が合わず、夫婦二人で飲みに行く機会はしばらくなかった。久しぶりに気軽に飲みに行けるので心が弾んだ。

体調が悪ければ家でゆっくりすることもあるので事前にお店は決めていない。近くのお店を探すが、年末年始で休みの店が多い。そば屋のような年末らしいお店はやっているのではと探してみると、大森駅前に最近出来たという寿司屋を見つけた。

自転車で行ってみると『鮨 希味』と大きな赤い看板が掲げられていた。店の前には今日のおすすめの書かれた立て看板が出ていて、揚げ物などの一品料理も書かれている。料金も予算内に納まりそうだ。入ることに決めた。

扉をくぐると白木のカウンターに案内された。カウンター10席ほどに、テーブル席が2卓。2階もあるようで宴会もできるのかも知れない。30代と50代の二人の板前さんで店を切り盛りしているようだ。先客は3組ほど。壁には握りと日本酒のメニューが掛けられている。

プレミアムモルツで乾杯して、お通しの牛乳寒天をつまみに飲んでいると、お願いしていた刺し盛りが来た。車海老が入っているのが嬉しい。年末最後にこの店を選んで正解だったと確信した。

日本酒に切り替えた。各地の日本酒があったが〆張り鶴にした。体を温めてくれる温かいものも食べたくなり、カキフライもいただいた。寿司を握ってもらおうという段になり、品定めをする。幸いなことにすべての寿司に値段が書かれている。それでは、好きなものを食べるだけではつまらないからと、一人が頼める値段の上限を1000円と決めて、各々プランを組み立てながら注文する。妻はウニを頼むなど、一点豪華主義。私はアジやコハダを頼むなどコスパ重視。結局上限を少し超えるも、米が口の中でほどける寿司を味わうことが出来た。

目の前で板前さんに握ってもらって、お酒こみで一人5000円ほど。ぜひまた伺いたい。その後はプラプラしていると『蔦八』さんが営業していたので煮込みとビールで楽しんだ。