先日読んだ『珈琲の世界史』から、どうも歴史熱が再燃している。身近な珈琲とは、時間も距離も遠く隔たった歴史の話に接点を見出すのが思いの外楽しかったからだ。それで、旅行で行ったことはあるものの、歴史的なことをほとんど知らないトルコのことを知ろうと、林佳世子著『世界史リブレット オスマン帝国の時代』を手に取った。
対象としている時代は?
対象としている時代はアナトリアにオスマン帝国が発生する14世紀から、拡大したオスマン帝国から地方有力者が現れ初めて衰退が始まる18世紀までの400年以上の間となる。歴代のスルタンを詳細に説明するわけではなく、重要な人物にスポットを当てる程度だ。ムラト一世、メフメト二世、セリム一世、スレイマン一世が何をしたかが説明される程度で多くの紙面は割かれない。ムラト一世はデヴシルメ、イェニチェリ軍団などの制度を作り、メフメト二世はコンスタンティノープルを征服したなど、だ。さらに、それ以降はスルタン重要性が低くなり、官僚制が台頭してくるというのが、本書で伝えたい重要な点だろう。
主に取り上げているものは?
広大な土地を領域として治める際の制度設計として、軍隊と官僚制度がよくできたようだ。 征服した土地に住む人々をイスラム教に改宗するという話よりは、そこに住む人々からいかに税金を徴収するかというシステムに重きを置いている。徴税する役割と、監視する役割が別れていて、公平感があるように思える。徴収制度の権限を強化して終身契約制度にしたことから地方有力者が現れ、オスマン帝国が衰退していくというのが面白い。なぜそのような強い権限を与えてしまったのか。
オスマン帝国が衰退して何がやってくるのか?
各地方に現れ始めた有力者たちが民族と結びついて力を得ていくという記述がある。
同時にヨーロッパで生まれた民族という概念は、ときに成長しつつあった地方勢力の台頭と結びつき、ときに地方有力者に不満をもつ民衆のイデオロギーとして、オスマン帝国を内部から解体に導いていく。林佳世子著,『オスマン帝国の時代』山川出版社,1997,88頁
オスマン帝国ではさまざまな人種と宗教が広大な領域に混在していたことが描かれている。キリスト教徒を徴用して軍隊を組んでいたりもする。職場と居住区でも、宗教の混在などもあったようだ。多民族・多宗教でオスマン帝国がうまく回っていたのか、それとも回っていなかったがゆえにたまった不満が民族として強い力を持ち始めたのかは、本書だけでは判断できない。この民族とはどのような民族なのか、気にしながら今後の歴史の本を読んでいきたい。
雰囲気を知るためにも、Netflixの『オスマン帝国 皇帝たちの夜明け』を観てみよう。